翼 -TSUBASA- 第6話 [翼 -TSUBASA-]
いつもより早い更新です(*'-')
前回とシーンが繋がってるので、描きやすかったからかもしれません
帰ってきた智明の前に再び現れた守護天使。
さて・・・どうなんでしょうね?w
翼 -TSUBASA- いままでの話
プロローグ 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話
翼 -TSUBASA- 第6話
スライスサーブ教えてくんない? 守護霊女はそう言った。
「スラ・・・・・・イス、サーブ・・・・・・? なに言ってんだ・・・・・・? つーか、どっから入りやがった?」
本当の俺は混乱してた。突然現れた守護霊女に、何を話していいか分からない。
「んと、窓? っていってもすり抜けたから開けてないけど。便利だけど、ちょっと変な気分なんだよな」
相変わらず、女はケラケラと軽く笑う。
女が現れなくなってから2週間が経っていた。てっきり俺の守護霊をやめたか、それとも気弱な俺の幻覚なんだとばかり思ってた。守護霊なんて都合のいいものが存在するわけねぇんだし。
なのに・・・・・・何でこいつはここにいる? 本当になんなんだ?!
「・・・・・・何してんだ? 人の部屋で」
俺はやっとのことで質問した。
「ああ、うん。だからさ・・・・・・こないだの事、智明に謝ろうと思って。だけど・・・・・・謝るだけじゃダメだと思ったんだ。だから、あたしもテニスしてみたんだけど」
女は俯きかげんで話す。時々、背中で翼が小さく揺れていた。
手にした水色のラケットを見ると、メジャーなメーカーもので水色をベースに黒が配色されたレディースモデルだった。
「・・・・・・テニス・・・・・・したのか・・・・・・?」
驚いた俺を見て女は苦笑した。
「うん。でも、全然ダメだった。ラケットには当たるようになったけど、コントロール難しいし、ボレーとかすぐネットになるし、サーブは遅いし・・・・・・テニスって難しいんだなぁ」
両手で抱えたラケットのフレームに顎をのせて、小さく溜息をつく。
もしかして、あれから、ずっと練習してたのか・・・・・・。わざわざ? 俺に謝る為だけに・・・・・・。
あの時、八つ当たりしたのは俺の方だった。なのに、先に謝罪された・・・・・・。
俺は女の横顔を見ていた。大きくはないが黒いハッキリとした瞳に、長い睫毛が被さっている。すーっと通った鼻筋と細く綺麗な曲線を描く顎のラインが、窓から差し込む西日が顔に影を落とすせいか、なんだか悲しげに見えた。
すると、女が顔を上げたせいで、俺は、女の瞳を正面からまともに見る破目になった。
心臓がドクリと跳ねた。一瞬、息が止まったかと錯覚しちまった。
「智明?」
「っ・・・・・・ゎ・・・・・・・・・・・・テニスに限らず・・・・・・簡単なスポーツなんかねぇよ」
言いながら、視線を逸らしていた。
違う。そうじゃねぇ。悪かったって言えよ。
「そりゃそうだな。あたし、球技苦手だからなぁ。水泳なら得意なんだけどさ」
俺には、女の言葉は届いちゃいなかった。
ただ謝るだけじゃねぇか。簡単だ。悪かったって言うだけだ。わりぃでもいい。
けど、あいつを見ると何故か言葉が喉で詰まった。
「・・・・・・スライスサーブを打ちてぇのか?」
「打ってみたいっ! だって、跳ねないから打ちにくいんだろ? 相手がっ」
女は無邪気に言った。
「・・・・・・テニスの事を自分で調べたのか? ラケットまで買って? 守護霊が何でそこまでするんだよ・・・・・・?」
俺が質問した途端、女の顔から笑顔が消えた。
「まあ、守護霊ってのは本当は違うし。幽霊と天使の間ってとこかな。本来はこうやって人前に出ちゃイケないらしいんだけど・・・・・・やっぱ、迷惑だったかなぁ・・・・・・良く言われたんだよな・・・・・・親切でも、必ずしもその人が喜ぶとは限らないって」
「俺の怪我を治すつもりだったとでも、言いたいのか?」
女は答えなかった。
「・・・・・・テニスはね、図書館とかで本を閲覧させてもらったんだ。あ、夜中にこっそり見たのは悪いと思ってるから謝るけど、本屋で売り物触るよりいいよな? ラケットは、訳を話したら仲間が作ってくれたんだ。すげぇっしょ?!」
「仲間? 仲間がいるのか? お前と同じ守護霊が?」
「うん、まあね。でも、守護霊じゃないって。天使だよ。もっと翼が大きくて、何でもできるんだ。それに比べたら、あたしは何にも出来ない。天使になったばっかりってのもあるんだけど。でも・・・・・・・・・・・・上から見てるだけってのは・・・・・・」
だんだんと声が小さくなって、そのうち、女はしゃべらなくなった。
俯いてはいないがどこか遠くを見てるような視線は、女が今にも泣くんじゃねぇかって、俺は慌てた。
「・・・・・・わりぃ・・・・・・」
言えた。今度はすんなりと、言葉が口から出てきた。
「違うっ、智明のせいじゃないっ。ごめんっ!あたしが自分で沈んじゃってどうすんだよっ、あはは。そんなことより、テニスしよう。な? 智明」
明るく振舞い始めた女は、俺を期待するような目で見ていた。
けど・・・・・・俺は・・・・・・。
「・・・・・・できねぇよ。俺は・・・・・・走れねぇんだ・・・・・・」
「・・・・・・うん。知ってるよ」
「じゃあ――」
「でも、テニスしたいんでしょ?」
俺を言葉を奪い取った女は、強い視線を外そうとはしなかった。
「走らなくても、テニスすることはできるよ。コートに立つ事だけがテニスじゃないだろっ。生意気な事言ってるかもしんないけど、テニスしたいのに、その気持ちを隠そうとしてる方がおかしいよっ。テニスしたいって言えよっ!智明!」
何も言えなかった。こいつの言ってることはいちいちムカツク。
でも、間違っちゃいねぇんだ。
俺は、テニスがしたかった。
「・・・・・・グリップは? セミウェスタンか? それとも――」
「は? セミ? ウェ・・・・・・? 何て?」
「だからっ、グリップはどうやって・・・・・・って、お前まさか・・・・・・おいっ!ラケット握ってみろっ!いいから言われた通りにしろっ、早く!」
「わ、分かったよっ・・・・・・はい・・・・・・これでいい?」
案の定、女は水色のラケットを両手でギュッと握っていた。
「何だっその握り方はっ?! それじゃ野球じゃねぇかっ! そうじゃねぇっ。本当に本で調べたのかよっ?」
「んと・・・・・・サーブの打ち方とか・・・・・・ボレーとか・・・・・・線の中に入れればいいんだ・・・・・・とか?」
読んでねぇな、こいつ。普通のテニス解説ならグリップの説明から入るはずだ。
「スライスサーブはまだ早い。とりあえず、グリップを固めるぞ」
ブーブーと文句を言う女をよそに、俺はウィンブルドンのDVDとテニスの専門雑誌を取り出してベッドに広げた。
すると、女は俺の顔を見て言った。
「あたし、ルカっていうんだ。ヨロシク、智明」
満面の笑みだった。
<つづく>
前回とシーンが繋がってるので、描きやすかったからかもしれません
帰ってきた智明の前に再び現れた守護天使。
さて・・・どうなんでしょうね?w
翼 -TSUBASA- いままでの話
プロローグ 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話
翼 -TSUBASA- 第6話
スライスサーブ教えてくんない? 守護霊女はそう言った。
「スラ・・・・・・イス、サーブ・・・・・・? なに言ってんだ・・・・・・? つーか、どっから入りやがった?」
本当の俺は混乱してた。突然現れた守護霊女に、何を話していいか分からない。
「んと、窓? っていってもすり抜けたから開けてないけど。便利だけど、ちょっと変な気分なんだよな」
相変わらず、女はケラケラと軽く笑う。
女が現れなくなってから2週間が経っていた。てっきり俺の守護霊をやめたか、それとも気弱な俺の幻覚なんだとばかり思ってた。守護霊なんて都合のいいものが存在するわけねぇんだし。
なのに・・・・・・何でこいつはここにいる? 本当になんなんだ?!
「・・・・・・何してんだ? 人の部屋で」
俺はやっとのことで質問した。
「ああ、うん。だからさ・・・・・・こないだの事、智明に謝ろうと思って。だけど・・・・・・謝るだけじゃダメだと思ったんだ。だから、あたしもテニスしてみたんだけど」
女は俯きかげんで話す。時々、背中で翼が小さく揺れていた。
手にした水色のラケットを見ると、メジャーなメーカーもので水色をベースに黒が配色されたレディースモデルだった。
「・・・・・・テニス・・・・・・したのか・・・・・・?」
驚いた俺を見て女は苦笑した。
「うん。でも、全然ダメだった。ラケットには当たるようになったけど、コントロール難しいし、ボレーとかすぐネットになるし、サーブは遅いし・・・・・・テニスって難しいんだなぁ」
両手で抱えたラケットのフレームに顎をのせて、小さく溜息をつく。
もしかして、あれから、ずっと練習してたのか・・・・・・。わざわざ? 俺に謝る為だけに・・・・・・。
あの時、八つ当たりしたのは俺の方だった。なのに、先に謝罪された・・・・・・。
俺は女の横顔を見ていた。大きくはないが黒いハッキリとした瞳に、長い睫毛が被さっている。すーっと通った鼻筋と細く綺麗な曲線を描く顎のラインが、窓から差し込む西日が顔に影を落とすせいか、なんだか悲しげに見えた。
すると、女が顔を上げたせいで、俺は、女の瞳を正面からまともに見る破目になった。
心臓がドクリと跳ねた。一瞬、息が止まったかと錯覚しちまった。
「智明?」
「っ・・・・・・ゎ・・・・・・・・・・・・テニスに限らず・・・・・・簡単なスポーツなんかねぇよ」
言いながら、視線を逸らしていた。
違う。そうじゃねぇ。悪かったって言えよ。
「そりゃそうだな。あたし、球技苦手だからなぁ。水泳なら得意なんだけどさ」
俺には、女の言葉は届いちゃいなかった。
ただ謝るだけじゃねぇか。簡単だ。悪かったって言うだけだ。わりぃでもいい。
けど、あいつを見ると何故か言葉が喉で詰まった。
「・・・・・・スライスサーブを打ちてぇのか?」
「打ってみたいっ! だって、跳ねないから打ちにくいんだろ? 相手がっ」
女は無邪気に言った。
「・・・・・・テニスの事を自分で調べたのか? ラケットまで買って? 守護霊が何でそこまでするんだよ・・・・・・?」
俺が質問した途端、女の顔から笑顔が消えた。
「まあ、守護霊ってのは本当は違うし。幽霊と天使の間ってとこかな。本来はこうやって人前に出ちゃイケないらしいんだけど・・・・・・やっぱ、迷惑だったかなぁ・・・・・・良く言われたんだよな・・・・・・親切でも、必ずしもその人が喜ぶとは限らないって」
「俺の怪我を治すつもりだったとでも、言いたいのか?」
女は答えなかった。
「・・・・・・テニスはね、図書館とかで本を閲覧させてもらったんだ。あ、夜中にこっそり見たのは悪いと思ってるから謝るけど、本屋で売り物触るよりいいよな? ラケットは、訳を話したら仲間が作ってくれたんだ。すげぇっしょ?!」
「仲間? 仲間がいるのか? お前と同じ守護霊が?」
「うん、まあね。でも、守護霊じゃないって。天使だよ。もっと翼が大きくて、何でもできるんだ。それに比べたら、あたしは何にも出来ない。天使になったばっかりってのもあるんだけど。でも・・・・・・・・・・・・上から見てるだけってのは・・・・・・」
だんだんと声が小さくなって、そのうち、女はしゃべらなくなった。
俯いてはいないがどこか遠くを見てるような視線は、女が今にも泣くんじゃねぇかって、俺は慌てた。
「・・・・・・わりぃ・・・・・・」
言えた。今度はすんなりと、言葉が口から出てきた。
「違うっ、智明のせいじゃないっ。ごめんっ!あたしが自分で沈んじゃってどうすんだよっ、あはは。そんなことより、テニスしよう。な? 智明」
明るく振舞い始めた女は、俺を期待するような目で見ていた。
けど・・・・・・俺は・・・・・・。
「・・・・・・できねぇよ。俺は・・・・・・走れねぇんだ・・・・・・」
「・・・・・・うん。知ってるよ」
「じゃあ――」
「でも、テニスしたいんでしょ?」
俺を言葉を奪い取った女は、強い視線を外そうとはしなかった。
「走らなくても、テニスすることはできるよ。コートに立つ事だけがテニスじゃないだろっ。生意気な事言ってるかもしんないけど、テニスしたいのに、その気持ちを隠そうとしてる方がおかしいよっ。テニスしたいって言えよっ!智明!」
何も言えなかった。こいつの言ってることはいちいちムカツク。
でも、間違っちゃいねぇんだ。
俺は、テニスがしたかった。
「・・・・・・グリップは? セミウェスタンか? それとも――」
「は? セミ? ウェ・・・・・・? 何て?」
「だからっ、グリップはどうやって・・・・・・って、お前まさか・・・・・・おいっ!ラケット握ってみろっ!いいから言われた通りにしろっ、早く!」
「わ、分かったよっ・・・・・・はい・・・・・・これでいい?」
案の定、女は水色のラケットを両手でギュッと握っていた。
「何だっその握り方はっ?! それじゃ野球じゃねぇかっ! そうじゃねぇっ。本当に本で調べたのかよっ?」
「んと・・・・・・サーブの打ち方とか・・・・・・ボレーとか・・・・・・線の中に入れればいいんだ・・・・・・とか?」
読んでねぇな、こいつ。普通のテニス解説ならグリップの説明から入るはずだ。
「スライスサーブはまだ早い。とりあえず、グリップを固めるぞ」
ブーブーと文句を言う女をよそに、俺はウィンブルドンのDVDとテニスの専門雑誌を取り出してベッドに広げた。
すると、女は俺の顔を見て言った。
「あたし、ルカっていうんだ。ヨロシク、智明」
満面の笑みだった。
<つづく>
るぴさんこんばんわ~(*'∇')/第6話~♪お疲れ様です!
今回は智明と名前が今回でわかったルカとのやりとり
よかった~!なんか初々しい感じが(*'∇')ってボクは
あまり偉そうなことは言えないですが::wでも読んでて
本当に二人の心境や思ってる事を話してるのがステキでした
智明はツンデレだったwこの後ちゃんとテニスの基本から
上手く出来る良いになるのかこの後の二人の展開が楽しみ
だぁ~♪
by セイバー (2009-10-19 19:38)
るぴさん、やっふ~(´◇`)ノ"
ジャンヌに続いて『翼』の執筆、お疲れさまですにゃ~。
ほむほむ(・ω・)守護天使ちゃんはルカちゃんというですか。
やっぱり、名前がわかると愛着も倍増ですにゃ(゜ω゜*)むふ
それにしても、テニス用語とかリアルでかっこいいにょ~(*´◇`)ノノ
しかも、天使さまとテニスのお話をするとゆう、不思議なシチュエーションがまた独特で、不器用な者同士、智明くんとルカちゃんの心のふれ合いが絶妙な感じだにょ(^◇^)b
by K-STYLE (2009-10-19 19:59)
セイバーさん☆
こばわ~~~ん(*´Д`*)ノシ
昨日はリヴチャお疲れ様でしたっ!翼読んでくれてありがとう!
やっと名前が出せて文章描くのが楽になりますwたぶんw
智明は(゜ー゜;)描いてるうちにツンデレになたw
天使がテニスとか設定おかしすぎだけどね^^;
最後の方でその理由を分かるからお楽しみに~♪
かっぱちゃん☆
やっふ~~~~(´∀`)ノシ
やっと名前出せましたw名前があるだけでビジョンがハッキリします
テニス用語はダンナちゃんに聞きながら(゜ー゜;)
ただ聞くと熱弁入って面倒とかwww
天使がテニスってめちゃオカシイですwでもでも一応理由があるので
もうちょっとおまちくださーい(*'-')w
思春期の葛藤をうまく描けるよう頑張ります('◇')ゞ
by ルピナス (2009-10-21 17:17)
おお!!守護天使ちゃんは、ルカちゃんって言うんですね!!
智明君にあやまるために、ラケット用意して、
テニスの事色々と勉強してたなんて、すっごくかわいいのですっ><
でも握り方とかが分かってない所は、なんだかルカちゃんらしいですね(笑)
ルカちゃんがテニスやってる事にも、何か理由があるんですね。
うわー、今後の展開も楽しみです^^
ではでは、なのですっ。
by satoru (2009-10-23 02:01)
サトルさん☆
こばわ~~(*´Д`*)ノシ
やっと名前が出ましたw ルカなりに考えた行動でしたが^^;
細かい事は気にしないルカですww
そろそろいろんな謎を解明しながら話を書こうと思います
次も楽しみにしててください!
by ルピナス (2009-10-24 22:41)
天使だったのかぁ!
あかぬけた天使様ですね~。智明のいないところでは普通に街でカッポしてるのかとし思ったら、そうでもないようです。ちょっと訳あり?
次回は智明君のスパルタレッスンかな?
by TSO (2010-04-22 00:20)